京浜工業地帯どまんなか

ガチョーン

ガチョーン


ガチョーン


ガチョーン・・




うろこのココロの叫びととシンクロするように、
工事音が響き渡る。




バスに揺られていたのであります。
京浜工業地帯どまんなか。



「危」とか「爆」とかの文字を掲げたトレーラがバクソウしている。
慣れてないからコワイよぅ(弱虫とでもなんとでも言ってくれ)



道路脇では石油精製所のエントツが炎を上げ雲を紫色に染め
街全体、道路から街路樹から建物から空まで
何もかも、何もかもが不吉に暗く、よごれている・・




バスは工場地帯を通り、木更津行きのフェリー乗り場を越え、
海(東京湾)近くで終点となり、





ポイ




うろこと、派遣営業のネーチャンを吐き出した。
うわ〜ちゃちゃちゃちゃちゃ!!!
こんなとこにポイしてコレカラあたい、どーすんのよぉぉぉぅ。
ごしょうだから、ウソだといって
(死語)




今日から派遣される場所への初出勤の。朝のこと・・・。



派遣会社の担当の営業ネーチャンが
先方への挨拶がてら、ついてきた。



こいつがまた、
今だから言うけど キレイなネーチャンで、
やらしーことにそれ知ってて、武器にしてた。
くねくねくねぇん♪
(・・・・ハンブンやっかみ、ハンブンは悔しいのである(正直だ))



海の近くでバスに捨てられたうろこと派遣営業は
やがてアスファルトも力尽き、
大小のジャリが しきつめられる小道をえっちらおっちら進みます




ジャリッ

ジャリッ

ザクッ


営業のネーチャンはヒールを小石で傷つけ、
機嫌が悪くなって終始無言。
うろこも世紀末の香り漂う排気ガスの世界に圧倒され
・・・・暗澹たる気持ちで無言。




荒野をつきすすむ無言の行進。



きゅきききいいぃいぃきゅぃいいぃぃいいぃっン!!
爆音+金属音とともに飛行機がハラを見せながら低空飛行中




ああ、羽田空港が近いのね・・・





やがて・・・
陸地の果て、東京湾のキワに
ねずみ色の工事現場事務所プレハヴ群が




スモッグで不吉にかすむ空
飛行機の爆音
工事の振動
毒水の海
さびてるプレハブ(←これがうろこの勤務先)




・・・むぅ(泣)




事務所の入り口はプレハブの2階なので
(たまに浸水するんだそうで)



外付けの階段を上る



ギシ


ギシ


あっ!一段ごとに音がしてます、音が(泣)




何段かめのところで、
大きいフナムシが行き倒れていて・・・



・・・これは未来の私の姿? (血涙)


ぉお・・同志よ・・


(ハッ!いかんいかん)



行き倒れ同志のナキガラをまたいで
階段をのぼり引き戸を開ける






ガッハハ、ンガッハハ!




不吉に汚れた外界をはねのけるようなおやっさんたちの笑い声




工事現場で働くガタイのいいおやっさんたちが 茶をすすり、
イカクン(イカの燻製)を食いちぎり談笑していたのであります。




「お?新しいネーチャンかね?」
一際ガタイのいいおっちゃんがイカクンを齧りつつ近寄ってきました。




うろこに同行してきたクネクネ営業担当、さすがプロの営業マン。
顧客先では不機嫌なカオを見せず



「えぇ、そうなんですよぅ♪
このスタッフなら 逃げ出したりしませんから
たくさん使ってください。よろしくぅ♪」
クネッ♪


どっ!どど、どういうこと?(怒)
前任者、逃げたのかよッ?(血涙)

ピクンとマユゲが動いたうろこをよそに、
営業担当はそのまま所長らしき人にひとしきり クネクネクネェン♪
そしてそそくさと退場


「う・・・・うろこと申します。よろしくおねがいします。」
ガハハオーラに圧倒されつつ挨拶する私に、
所長らしき人、開口イチバン



ネーチャン、みそ汁作れるかァ?
いやー、賄いのバーチャンが熱出しちまってな。 メシは、今日は
出前の弁当とるんだけど、みそ汁のみてーんだよ。んが、は、は、」 ・・・。




・・・・。



パソコンオペレータ・時給ほにゃらか円。
大手ゼネコンジョイントベンチャー事務所勤務。
パソコンのスキルアップを目指す方、秘書経験者優遇。




あたくしうろこ。
当時まだ20代で、ニンゲンが中とハンパだったのでこりゃショック!



パソコンオペレータとして来たのによう!
その昔秘書検定に合格したときゃ、あたしゃ成績優秀で表彰されたんだッ
(そう、それは平賀源内がエレキテルを発明したあの昔・・)



営業担当が、スーツ着用必須っていうから、
キレイな靴はいて、スーツ着て来たのによう!
オトナはウソツキだぁ〜!!・・・っていうか、
募集のかけ方、間違ってます。思いっきり。



フナムシが行き交う食堂の奥のコンロで
なぜか湯を沸かす私(だって味噌汁・・・)



み・・・みそ汁だぁ?
作れるとも、んなものぁおやすいご用さ。
が、しかし、だ。 しかし、しかし、だよ。・・・・・。
ココロの準備というものがあってだな、その・・



あたしゃーナニシニきたんね? え?
こーゆーとこだったらこーゆーとこです、って
最初にいってくんないとッ!
スーツ、貴重なんだからサッ!


クネクネ営業め、
「ではよろしくぅ♪」なんつって 短いスカート翻して、
おめーはなぁ、おめーは・・・クッ、ククゥッ・・・・!


・・・ううう。




怒!!!
ジャロに訴えてやる!(←訴え先まちがってます)




だがしかしワタシはしっかり



・・・工事完了までそこで働き通してしまったのでありました




だって、オヤヂさんたち、イイヒトだったんだもん


うろこの味噌汁おかわりしてくれたし(涙)





やがて春が来て工事が終わり、
その現場事務所もご用済みとなりまして



ズゴゴズゴゴと重機で壊されていくその事務所を
現場のミナサマといっしょに並んで、ヘルメットかぶって 見届けた私・・・。
そのヘルメットのでかかったこと・・
(そしてくさい)



あぁ。

工事の振動で、パソコンが何度も何度もノイローゼになったこと
(そのたびに事務作業がイチから出なおし!になったこと)

近くの精油所で大火災が起こり出勤できなかった朝

現場の事故でお亡くなりになった方の葬儀


道○公団の、あの担当者のおやぢギャグへのめまい・・
(そしてのちに洗脳されライフワークへ)


ガテンなおやっさんたちの、職に抱く熱い思い
(泊まり込みで勉強してたモギさん・・感服です)




晴れればうす黄色く、
曇ればどす黒い不吉な色の空の下

雨はシャツに灰色の染みをつけ
街の華やぎははるか遠く
荒涼としたジャリ平原を工事車が砂埃とともに行き交い
タール化した街路樹を横目に、
帰宅時にバスに乗り込んでくる疲れた顔、顔、顔・・・





家に帰ると、耳も目も鼻も、穴という穴が黒く汚れていた毎日(キタネー)





ああだけどこれで最後・・・・・

やりとげた・・・・前任者が三人も逃げ出した職場のトリを
ワタシは見事、勤めはたしたのだッ


な・・長かった・・・



感慨が胸臆に満ち



どうだ、まいったか!!!派遣会社!
うはははははははッッッ!!!!!

天を見上げ、飛行機に向かって高笑い!




・・・・



いや・・・





だがしかし





決して



まいりャ〜しないだろうな、派遣会社。


ただ、単に
契約とおりにコトが運んで「これがフツウ」くらいのもんだろ





いっつもコレだゼ(苦笑)







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